独吟連歌「鉄格子富士」之巻
通勤路鉄格子富士雪雫(つうきんろてっごうしふじゆきしずく)
龍登天而鷹化鳩(たつてのぼりてたかはとにくゎし)
春日和川に流るる千本葦(はるびよりかはにながるるせんぽんゐ)
霞渡れる橋の夕映え(かすみわたれるはしのゆふばえ)
夜潮満ち真夜の幻朧月(よじおみちまよのまぼろしおぼろづき)
天の果てゆく海人小舟の帆(あまのはてゆくあまをぶねのほ)
氷菓子笑まふ唇飴染めて(こおりがしゑまふくちびるあめしめて)
おみこし担げ浜降祭り(おみこしかたげはまおりまつり)
曙の波に吹かるる白南風に(あけぼののなみにふかるるしろはえに)
触れられ靡き黒髪の糸(ふれられなびきくろかみのいと)
寄りてこそそれかと匂へ襟薫る(よりてこそそれかとにほへえりかをる)
求むるも得ず転寝返し(もとむるもえずうたたねかへし)
茅萱折れ逢崎の浦名残とて(ちがやおれあひさきのうらなごりとて)
今宵の月ぞ思ひ懸かれる(こよひのつきぞおもひかかれる)
な忘れそ汝が偲ぶ種龍田姫(なわすれそながしのぶぐさたつたひめ)
朗ら朗らとやをら明くる夜(ほがらほがらとやをらあくるよ)
畳薦熱海桜は咲きすさび(たたみこもあたみざくらはさきすさび)
島流さるる不折の信女(しまながさるるふせつのしんにょ)
波浮港荒南風立つに矢竹振り(はぶみなとあらばえたつにやたけふり)
雲の峰より信天翁が(くものみねよりをきのたゆうが)
日の出浜日出処飛び込みて(ひのではまひいづるところとびこみて)
老ゆる火山が蘇りけり(おゆるかざんがよみがへりけり)
足柄の蘆のうみの辺騒がしく(あしがりのあしのうみのへさわがしく)
嵐起こしし水分ち杖(あらしおこししみづわかちづえ)
天離る荒野消につつ露霜は(あまざかるあらのけにつつつゆじもは)
柳散る折其処に琴掛け(やなぎちるをりそこにことかけ)
夜長きに古家の在り処目も合はず(よながきにふるへのありかめもあはず)
毀ちし郭重ねて築きき(こぼちしくるわかさねてつきき)
天守閣たぐひつつある望月に(てんしゅかくたぐひつつあるもちづきに)
仮廬も作り小角も鳴さむず(かりほもつくりくだもなさむず)
刺す竹の栄ゆる町に立つ御堂(さすたけのさかゆるまちにたつみだう)
表の扉半ば掩ひて(おもてのとびらなかばおほひて)
春暁や南湖院跡軒並みて(しゅんぎょうやなんこいんせきのきなみて)
庭園の木々萌み初めけり(ていえんのきぎめぐみそめけり)
小出川桜吹雪ぞ流さるる(こいでがわさくらふぶきぞながさるる)
橋柵越しに左富士見し(はしくへこしにひだりふじみし)
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